拝啓
其の後父母様にはお変わり有りませんか?小生御父母様を初め皆様には御世話ばかり御かけ致しまして、今更になって言っても始まりませんが、何一つ皆様に対する、親に対する孝行もせず、親を親とも思わないような私ではありましたが、今小生の思っている事、目的を達成したならば、これが何よりの国家に対する御奉公であり、又、親・姉・弟に対しての御恩返しだと思っています。
自分が思っている事、今張り裂けるばかりに胸中に詰まっている思いを、明朝は必ず晴らして見せます。そして新しい春のような気持ちで皆の後を追って行きます。御父様や御母様も其の事をよく理解されまして、あっさりと御諦めて下さい。
御両親とも御体に気をつけて最後まで頑張って下さい。時ちゃんも敬ちゃんも御父母様の言われることをよく聞いて、何が何でもやり抜く事。日本人だから何処に出しても恥かしくない、日本人だから、米や英人にならぬ事。兄に負けぬようついて来い。近所の皆んなに宜しく言って下さい。
では皆さんお元気で、後、発進まで三時間しかありません。あと三時間したら他国の人となるのです。諦めて下さい。泣かないで下さい。
お父さん、お母さん、時ちゃん、敬ちゃん、さようなら。
神風特攻。第9銀河隊。 昭和20年5月11日、沖縄方面にて戦死。20才。